消炎鎮痛剤
消炎鎮痛剤は、現在では非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs: Non Steroid Anti Inflamatory Drugs)と呼ばれることが多いです。痛みや炎症をおこす物質であるプロスタグランジンの産生を抑えることによって、消炎、鎮痛効果 を発揮します。解熱作用もありますが、これは脳の視床下部という部分にある体温中枢に作用しておこるとされています。また、プロスタグランジンは血小板を固まりやすくするので、これを抑えるNSAIDsは血栓の予防的効果 もあるとされています。
適応症
上記のような作用機序から、NSAIDsは現在、リウマチや筋肉関節の病気、頭痛、歯痛など痛みを伴う疾患、感染症などで発熱を伴う場合、血栓症などをおこしやすい人の血栓形成予防、などに用いられています。ただ、近年、小児のインフルエンザの発熱時に、NSAIDsがインフルエンザ脳症を悪化させるという報告があり、この場合の使用は原則として禁止されました。
種類
構造の違いからいくつかの種類に分類されています。内服薬、座薬、塗り薬、シップ薬などの性状の違いもありますし、作用や副作用も違うので、目的に応じて適切なものを選ぶことが肝心です。
- サリチル酸系---各種アスピリンがそうです。血小板凝集抑制作用が強いです。胃腸障害、耳鳴りなどの副作用があります。
- アリ-ル酢酸---インドメサシン、ジクロフェナク(ボルタレンなど)などがそうです、効果 の強いものが多いです。
- プロビオン酸系---イブプロフェン(ブルフェンなど)、ロキソプルフェン(ロキソニンなど)、チアプルフェン(スルガムなど)などがそうで、副作用が比較的少ないことから現在もっともよく用いられています。
- フェナム系---メフェナム酸(ポンタ-ルなど)などがそうです。 歯痛、頭痛などにはよく効きます。
- オキシカム---ピロキシカム(バキソなど)、アンピロキシカム(フルカム)などがそうです。一般 に半減期が長く、効果が長もちするものが多いです。
- 非酸性---チアラミド(ソランタ-ルなど)、エモルファゾン(ペントイルなど)などがそうです。効果 は他と比べて弱いものが多いです。
副作用
もっとも多い副作用は胃腸障害(10%程度でみられます)ですので、NSAIDsを用いる時は胃薬などを併用することがあります。この他に 腎障害、肝障害、抗血小板作用による出血傾向、アスピリン喘息などアレルギ-、などがあります。腎障害はもともと腎機能の悪い人や高齢の人には要注意です。
また、妊娠末期には胎児の動脈管という部分に影響をするので、できるだけ避けたほうがいいでしょう。ニュ-キノロン系の抗生物質と一緒に飲んで、高齢者が痙攣をおこしたという報告があるので、これもできるだけさけるべきです。ワ-ファリンの血中濃度に影響するのでワ-ファリン内服中の人も注意したほうがいいでしょう。
NSAIDsに似た薬
NSAIDsの分類には入らないのですが、同様の解熱、鎮痛作用を持つ薬がいくつかあるので、ここで一緒に紹介します。
- ピラゾロン(ピリン)系---スルピリン(メチロン、スルピリンなど)がそうです。過敏症をおこす人があり、効果 もあまり強くないので、最近ではあまり使われなくなっています。
- アニリン系---アセトアミノフェン(アンヒバ、カロナ-ルなど)などがそうです。小児の解熱鎮痛によく用いられます。
- 総合感冒薬---PL顆粒などがそうです。これらにはアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬に加えて、鼻水などに効く抗ヒスタミンや、カフェインなどが配合されていることが多いです。