耳鼻科の病気

飲み込みにくい

どんな症状?

ものが飲み込みにくいという症状を嚥下障害と言います。嚥下障害を大きくわけると、咽頭や食道などに物理的に狭くなっている部分があり、そこで実際に食べ物の通 過障害がある場合と、嚥下に関係する様々な神経の異常によって嚥下する時に咽頭や食道の筋がスムーズに動かなかったり、うまく嚥下できていないと知覚してしまうことによって起こる感覚的な嚥下困難感(機能的嚥下障害)とがあります。このふたつを簡単に鑑別 する目安として、物理的な通過障害のある場合は、液体は嚥下できるのに固形物、とくに大きな固形物ほど嚥下しにくく、神経性のものでは、固形物よりも 唾液の嚥下がしにくく感じることが多いです。 ですが、はっきりと鑑別するためには、様々な検査が必要になります。

物理的な通過障害

この原因として考えなくてはいけないのは、まず中咽頭下咽頭、食道の腫瘍です。また食道炎など強い炎症の後の瘢痕のために食道が狭窄しているような場合も通 過障害が起こり得ます。その他、甲状腺の腫瘍によって圧迫されて通 過障害がある場合もあります。頚椎のヘルニアや異常骨化などが食道の一部を圧迫している場合もあります。下咽頭食道造影検査(バリウムを飲みながら咽頭や食道の様子を撮影します)が必要で、ある程度以上の大きさの病変は証明されます。何か異常のある時にはさらに食道ファイバーで詳しく検査をします。CTやMRIによって周辺の臓器を広く観察する必要がある場合もあります。

機能的嚥下障害

嚥下に関係している神経は、舌咽神経、迷走神経、舌下神経で、これらの神経は延髄につながり、さらに大脳皮質につながっています。延髄や大脳皮質の関係する部分に、脳硬塞、脳出血、脳腫瘍などの病変があれば、嚥下障害を生じます。また筋萎縮性側索硬化症という神経の難病でも嚥下障害を来すことが多いです。これらの神経の病気では、たいていは他の症状も伴っているので、耳鼻科に最初に来られることは少ないです。

耳鼻科的な嚥下障害の原因として、慢性副鼻腔炎、逆流性食道炎、 喉頭アレルギー、 などが考えられます。副鼻腔炎では後鼻漏(鼻がのどの方に流れる)を伴っていますし、逆流性食道炎では胸焼けがあり、喉頭アレルギーでは咳を伴うのが一般 的で、問診によってある程度推察できます。

診察で異常所見がほとんどみられなくて、心理的な要因が関与していると考えられているのが、咽喉頭異常感症です。これは普段にのどになにか塊のようなものがひっかかっていると感じ、唾液を飲み込みにくい感じがするが、実際に食事などは飲み込める、というような症状のことが多いです。全身的な基礎疾患が関与している場合もありますし、精神的なうつ傾向が関係する場合もあります。こういった関連する病態を把握し、下咽頭食道造影などにより上記のような通 過障害がないことを証明する必要があります。食道内圧検査や咽頭や食道の筋電図が診断の助けになることもありますが、これらの検査ができる施設はごく限られています。確定診断は容易ではなく、「疑い」状態のままの患者さんも多数おられます。ですが、いたずらに検査を続けて確定診断を求めるよりも、主治医と十分に相談しながら適切な薬や生活環境を見い出して行く方がよい結果 となることが多いです。

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