耳鼻科の病気

慢性副鼻腔炎

概要

慢性副鼻腔炎は、副鼻腔と呼ばれる部分に慢性的に炎症が起きた状態を言います。副鼻腔には、上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞がありますが、慢性副鼻腔炎ではこれらのひとつだけが侵されることは少なく、多くは両側性で、上顎洞、篩骨洞の順に頻度が高いです。

原因としては、鼻中隔彎曲症などの形の異常、細菌感染、また感染に伴うアレルギー反応、粘膜の防御機能の低下などが考えられています。また特殊なタイプとしては、上の奥歯の病気から起こるものもあります。上の奥歯と上顎洞の間は、薄い骨1枚しかないので、炎症が波及することがあるのです。環境要因の影響も指摘されています。

→鼻の構造の図を見る

症状

  1. 鼻閉
    鼻腔の中に鼻汁が貯留して起こる場合以外にも、粘膜の浮腫、腫脹、肥大によってもおこります。また、慢性副鼻腔炎には鼻茸が合併することがあるのですが、この場合は鼻茸による鼻閉も考えられます。
  2. 鼻漏
    鼻および副鼻腔の粘膜からの分泌物が増えるため、おこります。粘稠で、膿性のことが多いです。前に出るだけでなく、後ろから咽の方に流れる(後鼻漏)こともあります。
  3. 嗅覚低下
    腫れた粘膜や、貯留した鼻汁などによって、嗅覚が脳に届く道が閉鎖されるためにおこることが多いですが、慢性副鼻腔炎が長引くと、粘膜の嗅覚を感知する細胞がダメになってしまい、永久的な嗅覚低下になることもあります。
  4. 頭痛、頭重など
    頭痛を伴うことも多いです。また鼻性注意不能症や慢性疲労症候群の症状が出て来ることもあります。

検査、診断

  1. 鼻鏡検査
    鼻粘膜は腫脹していることが多いです。それぞれの副鼻腔の開口部分に、粘液など分泌物がたまっているのが見えることもあります。
  2. レントゲン検査
    普通は、後頭前頭法とウォーターズ法というふたつの角度の違うX線写真を撮影しますが、これでは篩骨洞の病変は判定しにくいので、その場合は断層撮影を行うこともあります。CTなどではもちろんよくわかりますが、これは蝶形骨洞炎など、他の方法ではわかりにくい場合に限られ用いられます。
  3. 細菌学的検査
    鼻汁または上顎洞内の貯留物の細菌を検査します。小児では、インフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などが多く、成人ではこの他に溶連菌や嫌気性菌なども加わって来ます。
  4. その他
    鼻汁の細胞を調べたり、鼻腔の線毛機能を調べたり、することもありますが、あまり一般 的ではありません。

治療

治療の方針は、殺菌、排膿、換気、消炎です。具体的には、薬やネブライザーなどで治療する保存的治療と、手術にわけられます。大人の場合、病変が高度なものや篩骨洞の病変が強いものは手術になることが多いです。小児の場合は、まだ副鼻腔が発達過程にあるので、12歳くらいまでは手術せずに保存的治療を行います。

【保存的治療】

  1. 抗生物質
    主には急性増悪期に行われます。細菌学的検査の結果を参考にして、効果のある抗生物質を選びますが、結果 が出るのを待てない時には、これまでの経験から、アンピシリンや広域セフェム系が用いられることが多いです。 また、殺菌目的ではなく、消炎目的で、マクロライド系の抗生物質を少量長期間投与する方法が、特に分泌の多い慢性副鼻腔炎に効果 があるとされています。 内服の他、ネブライザーで抗生物質を投与する場合もあります。この場合は、アミノグリコシド系の抗生物質が使われることが多いです。 抗生物質の項を参照してください。
  2. ネブライザー治療
    用語集のネブライザー治療を参照してください。
  3. 副鼻腔洗浄
    上顎洞の自然開口部は、中鼻道にあるのですが、洗浄をする際はここからではなく、下鼻道の骨をやぶって穴をあけた部分から行うことが多いです。
  4. Proetz置換法
    仰向けに寝て、頭をベッドの端から少し下げた状態で、3~5mlくらいの薬液を鼻腔に流し込み、次にPolizter球などを用いて、鼻腔を閉鎖しながら吸引します。この時、反対の鼻翼を指で押さえます。こうすると、治療している鼻腔の中が陰圧になり、副鼻腔内の貯留物が出て来ます。次に吸引をやめると、今度は最初に鼻の中に入れた薬液が副鼻腔の中に入るのです。この方法は、篩骨洞によく効きます。
  5. 酵素製剤
    酵素製剤は、鼻汁の粘稠度を低下させて、鼻汁の排泄を促す方法です。すぐには効果 は出ないので、通常1ヶ月以上投与されることが多いです。

【手術療法】

  1. 副鼻腔根本手術
    昔から行われている手術の方法で、Caldwell-Luc法、和辻ーDenker法などのやり方があります。上の歯の根元から切り開いて、上顎洞に到達する方法で、広く上顎洞の粘膜を除去することができるので、完治する可能性は高いですが、現在では下記の内視鏡による鼻内手術にとってかわられるようになりました。
  2. 内視鏡下鼻内手術(ESS: Endoscopic Sinus Sergery)
    最近は副鼻腔の手術というとほとんどがこれです。内視鏡で様子を見ながら、鼻の穴からいろいろな操作をします。慢性副鼻腔炎の場合は、上顎洞と鼻腔との連絡口(自然口)を大きく開き、そこから上顎洞の中を洗浄吸引します。また篩骨蜂巣の薄い骨の隔壁を壊して、篩骨洞の貯留物も排泄させます。必要に応じて、鼻中隔彎曲症を同時に治したり、下甲介粘膜を除去することもあります。

戻る