においが鈍い
どんな症状?
嗅覚(きゅうかく)というのは、人間が危険を察知するのに大切な五感のひとつであると同時に、生活の楽しみの部分でもあり、においが鈍い(嗅覚障害)ということは本人にとってはとても辛いことでしょう。人間が匂いを感じるには、まず匂いの分子が鼻の中の上の方にある嗅上皮という部分に届き、それを神経が嗅球という脳の前方の部分に伝え、そこから脳のさらに上の部分に伝わることが必要です。このいずれの部分が障害されても、嗅覚障害が生じ得ます。実際には、最後の脳の部分の障害で嗅覚障害がおきることは少ないので、嗅上皮に届くまでの障害(呼吸性嗅覚障害)か、嗅球までの障害(末梢神経障害)か、または両方が原因になることがほとんどです。
呼吸性嗅覚障害
この原因としては、鼻腔の変形と鼻汁の分泌が多すぎるということが考えられます。鼻腔の変形としては、鼻中隔弯曲症や鼻茸が挙げられます。分泌過多になる病態はアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎が考えられます。このタイプの嗅覚障害は、症状が変動することが多く、まったく匂わないというほどの高度の嗅覚障害を来すことは少ないです。手術で変形を治したり、ステロイド剤の点鼻などで嗅覚を取り戻せる可能性が高いです。
末梢性嗅覚障害
前頭部の外傷や、ウィルス感染の後の神経障害によって、このタイプの嗅覚障害が生じます。ある種の抗癌剤の投与や有機溶剤の吸入によって生じる場合もあります。喫煙や飲酒の関与もあるようです。このタイプの障害では、異臭症(実際の匂いと違った匂いが感じられる)が見られることもあります。神経が障害されているので、現在のところ確実な治療法はなく、治る率も低いです。