耳鼻科の病気

滲出性中耳炎

概要

滲出性中耳炎は、中耳に液体のたまる病気で、多くの場合急性中耳炎に引き続いておこっているようです。その病因に関しては、現在もまだ不明の部分が多いです。以前は、耳管の炎症やアデノイド、腫瘍などにより耳管咽頭口が閉塞された時、耳管に狭窄が起こり(耳管狭窄症)、中耳腔が陰圧になり、粘膜から液体が漏出した状態が滲出性中耳炎と考えられていました。しかし最近では、滲出性中耳炎は単なる耳管狭窄から生じるものではないという説が強くなっています。中耳にたまった液体から、細菌の出すendotoxinという毒素や、様々な炎症物質、免疫複合体などが見つかったりしていることから、現在では、中耳の細菌またはウィルス感染(急性中耳炎)があって、そこから放出された様々な炎症物質が中耳や耳管の粘膜の線毛運動を障害するために液がたまる、という説が有力です。鼻アレルギーやアデノイド肥大のある人に滲出性中耳炎が多いのは、鼻汁が多いことや耳管咽頭口の閉塞が二次的にこの病態に影響するため、とのことですが、まだ不明の部分も多いです。
鼻の構造で耳管の位置などを確認する

滲出性中耳炎は、小児と老人に多い疾患です。鼻アレルギーのある人、アデノイドの肥大している人に多い傾向があります。理論的には急性中耳炎が先行するとされていますが、急性中耳炎に気付かれないまま滲出性中耳炎になる場合も少なくないようです。

滲出性中耳炎は最近増加傾向にあると言われています。学校検診の充足により、発見率が高まったことや、強力な抗生物質ができたために急性中耳炎の時に鼓膜切開をする頻度が低くなったこと、アデノイド切除をあまりしなくなったこと、などが増加の原因として考えられています。

症状

耳閉感難聴が主な症状です。耳閉感は自声強調といって、自分の声だけ大きく響くような感じがするという症状を伴うこともあります。難聴は軽度の場合には気付かれないこともあります。小児の場合は、耳閉感も難聴も自分から訴えることはなく、親や周囲の人間が聴力低下に気付き、耳鼻科に連れて来るということも多いです。

検査、診断

まず鼓膜の観察が一番重要です。大人の場合、鼓膜は陥凹して灰色っぽく見える場合が多いです。また滲出液の色によっては黄色、褐色、青っぽい色に見える場合もあります。液の部分と空気の部分の境界線(Air-Fluid Level)が見えることもあります。小児では拡張した血管の色を反映して、赤黒い色に見えることが多いです。鼓膜に空気を送りながら観察すると、貯留した液が多い場合は動きが制限されているのがわかります。

聴力検査では、伝音難聴を示します。

ティンパノメトリ-では、理論的にはB型を示すはずですが、他の型のことも少なくないです。

滲出液がたまってはいないけれど、耳管機能が悪い状態(耳管狭窄症や耳管開放症)でも滲出性中耳炎と同様の症状が見られるのですが、これらの検査により鑑別することが大切です。

治療

【耳管通気法】
鼻の中の鼻汁などを十分に吸引して、通気管という管を用いて、耳管咽頭口から直接耳管に空気を送る方法です。これによって耳管を広げ、中耳の換気をするのが目的です。小児では通気管を用いることが難しいので、Polizter球という道具を用いて鼻腔から空気を送ります。この時、のどの方に空気がいかないようにするために、唾を飲み込んでもらったり、「ガッコ」と言ってもらったりして、鼻咽腔が閉鎖されるタイミングに合わせて送気します。

鼻の状態の悪くない人には、家庭でValsalva法という通気をしてもらうこともあります。これはダイビングの時の耳抜きと同じで。口を閉じ鼻をつまんで、軽くつばを飲み込むか、息を吐く方法です。 あまり頻回にしたり、不適切な方法でこれをすると、他の病気をひき起こす場合もあるので、まず医師の指導を受けてからするようにしてください。

【鼓膜切開】
鼓膜に切開を加えて滲出液を吸引します。切開した穴は、通常2~3日以内に自然閉鎖します。滲出液が漿液性の時は、粘稠度が低いので1回の切開で十分に吸引できることもありますが、滲出液が粘稠な場合は切開をくり返すか、下記のVentilation Tubeを留置することになります。

【Ventilation tubeの留置】
鼓膜に切開を加え、そこに細いチューブを入れます。チューブには様々な種類があるので、病状と目的にあったものを選びます。チューブを入れている間は、外耳道から中耳腔へと容易に細菌が侵入することができるので、感染予防につとめなくてはいけません。大人の場合は、鼓膜麻酔のみでできますが、小児の場合は入院の上、全身麻酔下で行われることが多いです。通常、チューブは数カ月から半年程度で自然に脱落することが多いです。自然脱落した場合、たいていは鼓膜の穿孔は自然閉鎖するようです。

【その他の治療】
鼻アレルギーのある場合はその治療と鼻の十分な処置が必要です。アデノイドの肥大が影響をおよぼしている可能性が高い時にはアデノイド切除を行います。

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